奉る歌

黄金(コガネ)巻 第四十四帖(五五五)

 奉る歌書かして置いたに何故読まんのぢ。大き声で読み上げよ。歌うたひ呉れと申してある時来てゐるぞ。歌でイワトひらけるぞ。皆歌へ唄へ。各も各も心の歌つくて奉れよ。歌結構ぞ。


 ひふみゆら、ひふみゆらゆら、ひふみゆらゆら。

 かけまくも、かしこけれども、歌たてまつる。

 御まへに、歌たてまつる、弥栄(ヤサカ)み歌を。

 世を救ふ、大みゐわざぞみことかしこし。

 まさに今、神のみことを、このみみに聞く。

 三千世界、救ふみわざぞ言(コト)ただし行かな。

 大神の、しきます島の、八十島(ヤソシマ)やさか。

 天かけり、地(クニ)かける神も、みひかりに伏す。

 堪へに堪へし、三千年の、イワトひらけぬ。

 したたみも、いはひもとほり、神に仕へむ。

 大稜威(ミイヅ)、あぎとふ魚も、ひれ伏し集ふ。

 かむながら、みことの朝を、みたみすこやかに。

 神の子ぞみたみぞ今の、この幸になく。

 国原は、大波うちて、みふみを拝す。

 天もなく、地もなく今を、みことに生きん。

 大みつげ、八百万神も、勇みたつべし。

 天地の、光となりて、みふで湧き出づ。

 一つ血の、みたみの血今、湧きて止まらず。

 大みこと、身によみがえる、遠つ祖神(オヤ)の血。

 すでに吾れ、あるなし神の、辺にこそ生きん。

 高鳴るは、吾か祖の血か、みつげ尊し。

 吾れあらじ、神々にして、祈らせ給ふ。

 天地も、極まり泣かん、この時にして。

 かつてなき、大みつげなり、たたで止むべき。

 天地も、極まりここに、御代生れ来ん。

 大き日の、陽にとけ呼ばん、くにひらく道。

 みことのり、今ぞ輝き、イワトひらけん。

 宮柱、太しき建てて、神のまにまに。

 抱き参らせ、大御心に、今ぞこたへむ。

 言いむけ、まつろはしめし、みことかしこし。

 ただ涙、せきあへず吾(ア)は、御(オン)まへに伏す。

 ささげたる、生命ぞ今を、神と生れます。

 大まへに、伏すもかしこし、祈る術(スベ)なし。

 今はただ、いのちの限り、太道(オミチ)伝へむを。

 祈りつつ、限りつくさん、みたみなり吾れ。

 いのち越え、大きいのちに、生きさせ給へ。

 ひたすらに、みことかしこみ、今日に生き来し。

 言霊の、言高らかに、太陽(オオヒ)にとけな。

 天に叫び、吾れにむちうち、今日に生き来し。

 あらしとなり、あまかけりなば、この心癒えむか。

 走りつつ、今海出づる、大き月に呼ぶ。

 みみかくし、生命と生れて、遠つ祖神(オヤ)さか。

 神々の、智は弥栄え、此処に吾れたつ。

 みたみ皆、死すてふことの、ありてあるべき。

 あな爽け、みたみ栄(ハエ)あり、神ともに行く。

 さあれ吾の、生命尊し、吾(ア)を拝(オロガ)みぬ。

 みづくとも、苔むすとても、生きて仕へん。

 いゆくべし、曲(マガ)の曲こと、断たで止むべき。

 かへりごと、高ら白さんと、今日も死を行く。

 追ひ追ひて、山の尾ことに、まつろはさんぞ。

 追ひはらひ、川の瀬ことに、曲なごめなん。

 みことなれば、天(アメ)の壁立つ、極み行かなん。

 と心の、雄たけび天も、高く鳴るべし。

 まさ言を、まさ言として、知らしめ給へ。

 たな肱(ヒヂ)に、水泡(ミナワ)かきたり、御稲(ミトシ)そだてんを。

 むか股に、ひぢかきよせて、たなつつくらむ。

 狭田長田、ところせきまで、実のらせ給へ。

 神々の、血潮とならん、ことに生き行く。

 言さやぐ、民ことむけて、神にささげん。

 にぎてかけ、共に歌はば、イワトひらけん。

 大き日に、真向ひ呼ばん、神の御名を。

 道端の、花の白きに、祈る人あり。

 拍手(カシワデ)の、ひびきて中今(イマ)の、大きよろこび。

 悔ゆるなく、御まへに伏し、祝詞(ノリト)申すも。

 祝詞せば、誰か和し居り、波の寄す如。

 のりと申す、わが魂に、呼ぶ何かあり。

 御まへに、額(ヌカ)づきあれば、波の音きこゆ。

 悔ゆるなき、一日(ヒトヒ)ありけり、夕月に歩す。

 曇りなく、今を祝詞す、幸はへたまへ。

 奉る、歌きこし召せ、幸はへ給へ。

 ひふみよい、むなやここたり、ももちよろづう。

かのととりの



――― ここまで ――――